_2018.02.05_Takuro Nakamura
独立して感じること|開業準備・内装編
前回の「独立して感じること|開業準備編」では
【独立資金のこと】
【新たにお店を出す意味があるのか・どんなコンセプト/理念のお店にするのか】
について記しましたが、思いの外長くなりすぎましたので2部構成に分けることに。笑
まさかこんなに書くことが出て来るなんて思いもしませんでした。それだけ真剣だということでご容赦ください。その続きを。
【どこに拠点を置き・どのような内装設備を用意するのか】
【どうして北参道を選んだか】
都内で新たに美容室を開業する場合、お客様が検索しやすい・見つけやすいエリア(渋谷・表参道・青山・原宿・代官山・中目黒・恵比寿・銀座etc…)に展開して行く傾向が強いです。その人気エリアで勝って行くためには何が必要なんだろう。参考にさせてもらおう。と、色々なお店のホームページを拝見しました。
売りがはっきりとしているお店は参考にさせてもらうことができましたが、大半が似たコンセプト・似たターゲットのサロンさんが多いような印象です。ほとんど違いがよくわからなくて参考にはできませんでした。
美容室のオーナーさんみなさんは、どのようなお考えで出店しているのでしょう。
もともと美容業界内で有名店といわれるお店で働いていたり、メディアへの露出度が高かったり、経験豊富で顧客をたくさん持っていたりする人気美容師さんなら、コンセプトがぼんやりしていても(失礼か!笑)通用すると思います。
しかし、僕にその度胸はありません。笑
実力も、実績もまだまだ足りないと思っています。
だからコンセプトにも、お店の運営の仕方にも違いを生みたかった。(Laughfulのコンセプトもまだまだぼんやりしているような気もする)
違いがわかりにくいお店ばかりだった場合、お客さんはお店選びをどこで判断しているのでしょう。
- 内装の雰囲気
- スタイル写真の雰囲気
- スタッフの感じ
- 値段
- 口コミ
- 家から近い
- 駅から近い
こんなところでしょうか。
・内装の雰囲気は似ている傾向が強い。
・スタイル写真はどのサロンも人気のカットモデルを使っているため違いがあまりわからない。そういったモデルにはカットをさせてもらえないので、ほとんどカラーリングとスタイリングぐらい。それで差が出せるのかは謎。独自のスタイルを打ち出すにしても、お客さんが求めているのかはわかりません。
・値段に関しては、クーポンを打ちどんどん安くなっている。しかもクーポンの打ち方が姑息。これは美容業以外にも言えることだけれど、クーポンを打つ前提で考えている。
・価格が安いために生産性を高めるのが難しい。生産性を上げるため、工夫をしていかなければなりません。詰めて予約を入れる。効率を求めすぎる。クオリティが落ちる。満足度が下がる。だから他に移る。でも他も似た感じ。だからお客さんはサロンジプシーなのでは?と思ったり。
・「家から近い」のはお客様が引っ越して遠くなったら来なくなる。
・「駅から近い」も同様。
だから広告掲載費をたっぷりかけて、クーポンを打って安くして、新規の方を呼ぶ。
で負の連鎖がスタート。
↓
いろんな広告の営業さんが来る。
↓
その広告業者も全部似ていてサロン自体がサロンジプシーに陥る。
これ、終わりなきラットレースに飲み込まれて行くようで怖いです。
絶対に飲まれたくなかった。
お客さんには満足してほしいし、自分は常に生き生き・のびのび働きたいし、スタッフにもそうであって欲しかった。
そこで自問自答の日々。
僕の場合、コンセプトや理念を決めるのと合わせてエリアを決めていきました。
・コンセプトは明確か。
・来店したいと思ってくれる方の性別・年齢・特徴は?
・その人はどのエリアにいるのかまたは、今後どのエリアがそうなっていくのか。
・その方はどんな内装・設備だと喜んでくださるのか。
etc…
ここでもあれこれ悩みましたが、詳しいことはあえて言いません。ただ、様々な要素からこの「北参道」を選びました。ストレートにいうなら魅力的なエリアだったから。
住宅街にアパレルの会社が立ち並び、飲食店もポツポツとあります。
インスタグラムの流行により、人気を博しているお店もあり、ダガヤサンドウ特集を組まれていたり、これからどのような発展を遂げていくのか楽しみでもあります。
Laughfulは流行の最先端を行くようなトレンディなお店ではありませんが、もしかしたらそのあり方は他にない新しいものになっていけるかもしれない。とは言え、まずは地域にしっかりと根付くお店でありたいと思います。
【内装について】
なかなかの天邪鬼な中村です。
ただよくあるような美容室の感じでは面白くありません。
美容室といえば、西海岸的な内装やアンティーク調な内装、インダストリアル的、ミッドセンチュリーっぽいものが多い印象です。
あとはガラス張りのちょっぴりモードな印象の美容室ですかね。
近頃は、バーバー文化を取り入れた真鍮を使ったり、金のステンシルでロゴを描いたりするものも多いですね。
あれはあれでオシャレなのですが、すでにあるのにあえてこのタイミング出すのもなぁ…と感じていました。
自分自身がリラックスをするのに一役かってくれていた禅の世界。
それに触れたのもありましたので、無駄のない和モダンのような空間が良いだろうと思いつきました。
ただ、一口に和モダンと言えどその幅はとても広く、一歩間違えると居酒屋のようになってしまうし、さらに一歩間違えると、中国や韓国の老舗のお店のようにもなってしまいます。(結構似た文化なのだということを知るきっかけにもなって、これはこれで面白かったです。)
僕の大好きなお客様の一人で、勝手に兄貴と思っている施工屋さんにお願いをしました。
内装のデザイナーさんにお願いし、デザインを起こしてもらうと予算がかさみますのでデザイナーを通すことを諦め、デザイナーさんがやっていることを見よう見まねで。
大変おこがましくお恥ずかしい限りですが、大まかなパースを書いて、イメージ写真を貼り付けてメモ書きを付け加え施工屋さんに渡し設計図を書いてもらいました。
打ち合わせは探り探り慎重に。その時よく参考にさせていただいたのは以下の内装。
本当に素敵です。
この他にも様々なお寺や茶室の写真を参考に「ここはこうしたい。」「ここはこんなのどう?」と丁寧に打ち合わせをしてもらいました。
やりたいことを全て行うと膨大な予算が必要となってしまいます。限られた予算の中で可能な限りのイメージを実現するために色々省き、ブラッシュアップをかけて今の形に最終決定しました。
テーマは「日本好きの外国人の部屋」
部屋というのは時に人を招いたりします。せっかくお招きしたのですからリラックスして欲しいですし、楽しんでいただきたいです。さらに、自分自身がリラックスできない部屋なら住みたくないですよね。
ですから、このテーマはちょうど良かったように思います。ホテルをお手本にした部分もありますから、リラックスは外せません。
センスの良い外国人はどんな感じで、部屋に日本を取り入れるだろう。その人のリラックス方法はなんだろうなどとあれこれ考えながら、施工屋さんに相談しながら内装を一つ一つ消化していきました。
漆喰の壁にしてもらったり、土間にしてもらったり、巾木(はばき)をつけてもらったり、細部に日本ならではなテイストを入れていただきました。予算を掛けるところには掛け、掛けないところは省いて無駄な出費を抑えてもらいました。
まさに断捨離。
禅に通ずる気がいたします。
カットやパーマ・カラーもまた同じ。あれこれ手をかけるのではなく必要なところに必要な分だけ。(話が逸れそうなので戻します。笑)
さらに「暖簾」
暖簾にはもともと店にとって伝統や誇りの象徴であると同時に、生活空間と仕事場、神聖な場所を分ける「結界」のような意味合いがあります。非日常的な空間に足を運んでいただき、おもてなしをする。
屋号などを染め抜き、店の顔として存在していた日本独自の文化です。
これこそ、創業100年を目指す僕たちにぴったりだと思ったのです。
日本的なお店なら暖簾は外せないでしょう!
でも、ここで一つ問題が起きました。
暖簾はくぐるもの。
引き戸でなくては暖簾をくぐることができない。
構造上、引き戸を付けられない。
そこで開き直って、横にかけることとしました。
誰からも特に突っ込まれないので、よしとしています。笑
開店当初、売り上げの算段がしっかりととれるのかわかりませんでした。顧客0だった場合のリスクヘッジとして運転資金を半年間分確保したかったこともあり、かなり厳しめの内装予算でした。
それでは到底やりたいことの「やの字」もできなかったので、その部分のバランス調整をかなり悩んだのを思い出します。
美容室の平均的な内装費は1坪35〜40万円と言われています。
結果としては、断捨離を行ったことが功を奏し30万ちょっとで完成させることができました。(あくまで内装費。設備費はこれに含まれていません。)
当初の計画の50%〜60%くらいのイメージで仕上げてもらいました。
予算の関係もありますが、人間はどうしても飽きていきます。そこで、年を重ねるたびにここはこうしていきたいと変化をつけやすくするため、あえて手をつけすぎないようにしてもらいました。
これからどのように進化するのか楽しみです。
施工屋さんには助けていただいて感謝しています。
【設備・材料は満足度に直結する】
- ・シャンプー台や、椅子、加温機(頭を温める機械)などの大きなもの
- ・ドライヤーやアイロンなどの細々したもの
- ・膝掛けやタオルなど、肌に直接的に触れる消耗品
- ・お店を彩る雑貨類
美容室を開業するには大小様々なアイテムが必要となります。
特に設備は、お客様がお店に対して感じる満足度に直結すると当初から考えています。
Laughfulの理念の一つである「これからの社会を形成して行く上での美容室のあり方」に沿ってアイテムを一つ一つ選んでいきました。
座ったり実際に試して、自分がお客さんだったらどう思うかを念頭に決めていきました。椅子はデザイン性も大切ですが、長時間座って腰が痛くなりにくいものを。
シャンプー台なら横になって、心地よさを感じるものを。シャンプーブースはリラックスできる空間をご提供できるよう、半個室に。もっと高いものもたくさんありましたが、ただ高ければ良いわけではないことも学びました。
このほか、雑貨類にもこだわりました。
内装費をギリギリまで詰めることができたおかげで、設備・材料には十分な予算をかけることができました。
諸々の導入費ですが、初期投資としてはこの規模の割にかなりかかり、回収できるまでに半年を費やしました。算段が取れるようになるまでに、本当にこの判断で大丈夫なのか随分と肝を冷やしました。笑
これはお店を経営していく上での経営者側の考え方もあるかと思いますが
誠実に、真剣にお客様の髪と頭皮のコンディションについて考えたお店のあり方
美容業からの環境問題解決へのチャレンジ
労働環境が良い職場であり、働きがいがあるお店の実現
これらを達成して行くためには設備や材料・人件費はどうしても抑えられない部分です。
まだまだ始めたばかり。今後様々な壁にもぶつかるでしょう。
ただここまでやってきて感じたのは、しっかりとバランスを考えていけば、なんとかなる。
ここまでなんとかなっているのだから、これからもチャレンジできる。
自然エネルギーを使用したサロン運営や、水を汚さないサロン運営など環境に優しいサロンのあり方。
お客様も働くスタッフも、双方が安心できて満足のいくサロンのあり方。
その輪郭はぼんやりとしていますが、少しずつでもいいので歩みをやめずに進んでいきたいです。
とはいえ、お力をお貸しいただいた様々な会社・ご担当者さんのおかげで、無事にオープンを迎えられたことは非常にありがたいこと。感謝しております。
このまま10年、20年、そして100年と先は長いですが、目標達成に向けてコツコツやっていきます。