_2020.01.24_Takuro Nakamura
美容師の僕が常に帽子をかぶっている理由
僕はいつも帽子をかぶっている。
休みの日でさえ帽子をかぶっている。
三度の飯より帽子が好き。そう言ってもいいくらいかぶっている。
かぶっていない日は365日のうち10日くらいだ。
らふるの店長、オーナーという立場、バリバリの美容師にも関わらず。
あまりにもかぶっているものだから、お客様の間でハゲてる説が流れたほどだ。
美容師なら自分の髪をお手本に、見せた方が良いとお考えのかたも多いでしょう。
お客様や友人、なんなら家族から
「どうしてそんなにも帽子をかぶっているのか」
「いったい帽子を何個持っているのか」よく質問される。
『キャップが3つ、ニット帽は8つある。』
それはどうでもいいのだが、
「どうしてそんなにも帽子をかぶっているのか」と、あまりにも聞かれるので、
需要は気にもせず今回はひとつブログのネタにしてみよう。
僕が常に帽子をかぶっているのには小さな理由は2つある。
1. 自分の髪が実験材料だから
2. 髪型を変え、その度持たれる印象が変わる事を防ぐため。
1. 僕の髪は実験用サンプル
僕はここまで様々な髪型をやってきた。本当に色々とやってきた。
だから実のところ、もう自分の髪型にこだわりが無い。
髪に対してこだわりがないと何が起きても気にならなくなる。(髪さえあればそれでいい。)
自分がどんな髪型にするかを悩むくらいなら、その思考力をお客さんに使いたい。
坊主頭を続けていた時期もあったが、せっかく美容師なのだ。
何か役に立つ事に使いたい。
そんな思いから自分の髪を使っていろいろな実験をしている。
お客さんに臨むとき、様々なケースを想定しておく必要がある。
しかし、お客様の髪を使って実験するわけにはいかないので、自分の髪で試行錯誤し、限界まで痛め抜き、本番(お客様の髪)で最悪の事態に陥らないようにしている。
例えば
・白に近いハイブリーチに最短で持っていくにはどうするか
・なるべく傷ませずにハイトーンにできないか
・傷んだ髪を復活させるにはどうするか
・その髪にパーマはかけられるか
・かかりにくい髪にどうパーマをかけるか
通常では絶対にやらない施術の組み合わせの数々。
ブリーチをして
ブリーチをした髪にストパーをかけて
ストパーした髪にヘアカラーの新色を試してみたりと、昨年1年間坊主頭から伸ばしていきながら様々な実験を行なった。
そして僕の髪は傷んでいく。
昨年一年で自分の髪に施したのは合計でこんな感じ。
・ハイブリーチ6〜7回(2ヶ月に1回)
・複数回のヘアカラー(毎月)
・トリートメントでのケア(週に一回)
・ストレートパーマ2回(半年に1回)
・パーマ1回(最後のとどめ)
最後のパーマ1回で完全に僕の髪は死んだ。
死を迎えた髪はまるで、茹ですぎた春雨のような、天草のようなそんな見た目、触り心地だ。
こうなると何をやっても元には戻らない。
最悪を知らないと、お客様に対して自分の言葉で最悪の状態を説明できない。
説得力に欠けたセリフしか出てこない。
僕は最悪の髪となった時の切なさや悲しさは痛いほどわかる。
自分の髪にこだわりがない人間からしても悲しくなるのだ。
だから絶対にやってはいけないと思える。
実は、最悪の状態を見たことがなかったり、自身の髪で経験をしたことがない美容師も多い。
僕が進んで実験材料になる事で、積極的にスタッフに最悪の髪を見てもらうことができるのだ。
百聞は一見に如かず。
日々実験をしていると、最悪の状態の髪を見る機会にぶち当たる。
そんな時のスタッフの反応はめちゃくちゃ面白い。焦ったり、ドン引きだったり様々だ。
「こんなになっちゃうんだ。。。」
あのテングサ状態の髪を見たことがある者は、決して目先の利益を出す目的でお客様に向わなくなる。
お客様の希望を叶えてあげたいという想いから断れず、かえって悲しませてしまう美容師にならなくて済む。
一歩間違うと、テングサ状態に陥らせる危険があるんだという事を身をもって知ることができる。
すると、人様の髪を使って無茶しなくなり、お客様に対して正しい提案を導き出せるようになる。
身をもって知っているからこそ、誠実に向き合うことができるのだと僕は思っている。
最終的にスタッフは何をやっても許されると、オーナーの髪でこんな遊びをし始める。
自分を使った実験は実に楽しいうえ、誰からも嫌われない。
そして自分の仕事に様々な恩恵を生む。
2. 印象が変わる事を防ぐため。
小学生だったある日、同級生がスポーティなベリーショートになって登校してきた。ツンツンさせた髪がとてもかっこよく見えた。
美容室に行った時は僕もその髪にしてもらおうと思った。
その髪型に近いヘアカタログの写真を指差して注文をしたのだが、完成したのは「ゴルゴ松本」だった。
「違う。そうじゃない。」
僕は天然パーマだ。
幼い頃からクルクル。天パなりにこだわりがあった。
生意気に美容室に行き、強くこうなりたいと説明していた記憶がぼんやりとある。
幼かった僕は天パだろうと何だろうとなりたいものにはなれると信じていた。
僕の髪は、ゴルゴ松本が伸びてくると今度はトシちゃん(田原俊彦)になる。
毎回注文するスポーティなベリーショート。
↓
毎回仕上がるのは何故かゴルゴ松本。
↓
そして伸びるとトシちゃん。
その時のイラつきを今でも覚えている。
僕はそのサイクルがとても嫌だった。
(※ゴルゴ松本さんと田原俊彦さんには何も罪はなく、ご本人のことは好きです。すみません。笑)
あのサイクルが嫌すぎて、ある時からずっと坊主頭になった。
だが、多感な時期の中学生。
あることに気がついた。
『ボウズは楽だったがモテない。』
色気付き始めた中学3年生の頃、そう思い髪を伸ばし始めた。
そして高校2年生、山梨県ではウルフヘア全盛期だった頃、生まれて初めて前髪と襟足にストレートパーマをかけた。
髪型が変わると周りからの反応も変わり、とても面白かった。
それはそれは変わった。
僕のモテ期は絶対に高2の夏だ。
思えばそこから実験的な思考が芽生え始めたのだと思う。
髪型一つで人から受ける印象はガラリと変わる。
金髪にしてチャラそうだと身構えられたり、
坊主頭で怖そうだと距離を取られたり、
きのこヘアで不思議キャラと思われたり、
髪型に変化が起きると、その都度様々な中村がいると思われる。
中村は案外平凡です。
中身は何も変わっていないのです。
つまり、テングサのような髪で臨むことはお客さんをびっくりさせてしまう。
『こんなヤツに髪、任せて大丈夫か?』
そう思われてしまったら本業に差し障る。
そんな誤解を防ぐために帽子をかぶっているのだ。
髪型一つで見せたいように見せられるし、本意とは異なることにもなりかねない。 良い印象を持たれるのであればいいけれど、実験していく中でお客さんが不安になるのであれば帽子で防止しようと。。。うん。
とりとめもない文章になってしまったうえ、誰が興味を持つんだと言った内容になったが、吐き出して満足している。
・自分の髪が実験材料だから
・髪型を変え、その度持たれる印象が変わる事を防ぐため。
この2つが理由で、僕は今日も帽子を被り続けている。